今回はアークライトさんより2022年2月に発売されるボードゲーム「ファイユーム」完全日本語版 のゲーム内容を紹介していきます。
緑とFの文字が大好きな奇才フリードマンフリーゼさん作品です。
直近のフリードマンフリーゼさんの作品の中ではかなりのおすすめできる面白いゲームです。
ということで「ファイユーム」完全日本語版がどういうボードゲームなのか、所感とルール紹介を交えて説明していきます。
ファイユーム 完全日本語版 基本情報
デザイン | System: フリードマン・フリーゼ |
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プレイ時間 | 110~140分 |
プレイ人数 | 1~5人 |
対象年齢 | 12歳以上 |
版元 | 2F Spiele |
日本語版販売 | アークライト |
発売日 | 2022年2月24日 |
希望 小売価格 | ¥7,920(消費税10%込) |
ファイユーム 完全日本語版 ボードゲーム概要
本作は、紀元前2000年のエジプトを舞台に、ファラオから使命を受けた参謀の一人として大湿地帯ファイユームの発展に尽力する戦略思考ゲームです。
プレイヤーはカードを使って、棲みついた危険なワニを追い払い、作物の収穫を指示し、集落を作るなどファイユーム発展のためにあらゆる事業を遂行していきます。
多種多様なカードを組み合わせて、素早く規模を広げられる強力なコンボを作りましょう!
また、ゲーム盤上に配置された集落や労働者は共有財産となり、すべてのプレイヤーが利用できます。盤面をコントロールし、カード効果をうまく組み合わせて大量得点を狙いましょう!
一人でもプレイすることができ、自己最高得点の更新を目指したり、ファイユームの発展計画を調整していくキャンペーンといった、充実した内容になっています。
引用:アークライト公式HP
ファイユームはエジプトの「ファイユーム」地方の発展をテーマにしたボードゲームです。
国王から供給された資金を使って、臣下であるプレイヤー達はファイユーム地方を発展させていきます(というフレイバーです)。
システムとしては「デッキ構築」「エンジンビルド」「ネットワーク構築」といったところ。
ボードの発展に使用するカードは、ターンが進むにつれて徐々に強力なものが開放されていき、更に最初は無かった新しい要素が徐々に登場します。それによってマップの様相がドンドン変化していきます。
ゲームが進むにつれて全く新しい要素が登場するのは、流石奇才フリードマン・フリーゼさんといったところでしょうか。
名作「コンコルディア」をフリードマンフリーゼさんが作ったらこうなった、みたいなことをよく言われますが、個人的にはコンコルディアより好きなボードゲームです。
ファイユーム 完全日本語版 ルール概要
ここからはファイユームのルールを紹介していきます。
初期セットアップ
初期セットアップ時のファイユーム地方はワニだらけです(笑)
紫のブドウ園と黄色の小麦地帯には全てワニが生息しています。こんなワニだらけで始まるのがファイユームです。
肉食のワニは現実だと遭遇したくないと思いますが、このゲームのワニは結構凝った作りになっており、見た目は中々可愛いですね。
このワニを退治していくゲームなのかと思いきや、このゲームのワニは何とプレイヤーの資金源にしかなりません(笑)
初期手札
プレイヤーは初期手札5枚でスタートします。全て手札にいれます。
- 農家:労働者コマを労働者コマに隣接するように配置。置いた場所の資源(ブドウ・小麦・石)1を得る。
- 入植地:小麦・ブドウ・石を1つずつ消費。入植地1を配置。勝利点3と3金を得る。
- 2本の道:小麦・ブドウ・石から2つを消費。道を2本配置。勝利点3を得る。
「農家」は、序盤に資源を得る唯一の方法です。農家コマを配置することで3種類の資源を確保していきます。農家コマをワニのいるマスに置いた場合、ワニが退治されて何故か1金手に入ります。
「入植地」を建設すると、お金と勝利点が得られます。入植地が場に存在すると以降、入植地を利用したアクションが出来るようになります。
「道」を建築して、施設同士を結ぶと追加の勝利点を得ることが出来ます。入植地同様に道を使用したアクションも沢山存在します。
手持ちのカードは最初はこの3種類しか無いので、ゲームの最初は農家コマを置いたり、入植地を立てて、道を延ばしたり、する位しかできることはありません。
各ターンでやること
プレイヤーは時計回りに手番が回ってきますが、各ターンでプレイ可能なアクションは4つしかありません。
- 手札を捨てて2金を得る
- 手札からカードを1枚プレイする
- 売り場からカードを1枚購入する
- 捨て札を回収する
①アクション:手札を捨てて2金を得る
これは読んで字のごとくで、手札のカードを1枚捨て札にすることで、2金を得ることが出来ます。
ただ、これは選択するのはかなり稀なアクションです。
どんなアクションでも2金以上の価値はあるので、本当にやることが無くて詰みかけている状態だったり、どうしても2金が欲しいときにしか選択しない救済アクションです。
②アクション:手札からカードを1枚プレイする
これが最もオーソドックスなアクションです。手札のカードを1枚捨て札にして効果を発動します。
最初の手札5枚は全プレイヤー共通なのですが、以降は全プレイヤー全然違うカードを獲得することになるので、プレイの流れはプレイヤーによって全然異なります。
基本的にはガンガン手札のカードをプレイして、ボード上を発展させ勝利点を稼いでいくゲームになっています。
カードのプレイに必要なコスト
赤い背景の枠で囲われた部分がそのカードのプレイに必要なコストです。例えばお金が必要だったり、資源が必要だったりします。
▼「小さな町」。必要なコストは「麦1・ブドウ1・石1」。5勝利点と2金を獲得。植民地に棒を立てて町化。
コストがかからないカードもありますが、基本的には大体のカードが何らかのコストがかかるようになっています。
カードから得られる恩恵
カードから得られる恩恵は緑の背景の枠で囲われた部分です。資源が得られたり、お金が得られたり、勝利点が得られたり、ボード上に何らかの建築物を建築したりします。
▼「窪地」。必要なコストは「小麦1・ブドウ1」。勝利点3と岩3を得る。道の繋がった岩タイルに「工房」の建築を行う必要がある。
マップへの影響
マップへの影響はカードのアイコンに描かれています。
マップ上に人を送り込んだり、入植地を配置したり、採掘したりと、マップに様々な効果をもたらすカードが沢山入っています。
▼マップに対して様々な効果を持つカードが登場。それらを使うことにより、マップはドンドン様相を変えていきます。
植民地に労働者コマが配置されていないと実行できなかったり、カードの実行条件もこのカードのアイコンで書かれています。
③アクション:売り場からカードを1枚購入する
売り場には全プレイヤーが購入可能なカードが並んでいます。この中から必要な代金を支払ってカードを1枚購入することが可能です。購入したカードは即座に手札に入るので、次のターンから使用可能になります。
市場にはカードデッキから引いたランダムな8枚のカードが並んでいるのですが、この内カード番号が若い順からソートして並べて、4つまでを3,4,5,6金で購入可能になっています。残りの4枚はその内購入可能になる状態のままになります。
▼市場に並ぶカードと値段はドンドン変化していきます。
誰かがカードを購入したら1枚カードの山札から引いて、再度カード番号が低い順に並び替えます。
これがこのゲームの面白い特徴の1つです。フリードマン・フリーゼさんの名作「電力会社」の発電所カードのようなもので、購入可能なカードはランダムに決まり、ただし番号が低い順から安く買えるようになります。
基本的に番号の数字が高いカードの方が高性能になっているわけですが、どういう数字のカードが場に並ぶかはその時々によって異なり、更に安く買えるか高く買うことになるかもゲームが進むたびに変わっていきます。
全てのカードを使えるわけではないので、このゲームではどの戦略をとるかを場に並んだカードと睨めっこして考えていくことになります。
④アクション:捨て札を回収する
手札を使っていくと当然手札が減ってくるわけで、何れは捨て札を回収しなければなりません。
捨て札回収アクションも、このゲームでかなり特徴的な要素になっています。
余った手札の枚数でお金が貰える
捨て札回収アクションを行うと3金もらえます。ただし、未使用の手札1枚に付き貰えるお金は1金減ります。
最小で0金になってしまいます。
未使用の手札が0枚なら3金もらえて、未使用の手札が3枚以上ならお金はもらえないということです。
捨て札を回収できるのは最後に使用した3枚まで
何と捨て札は3枚までしか回収できません。
更に好きに回収できるわけではなく、最後に使った3枚しか回収できません。
カードを使う順番も重要になります。
これがあるので、便利な強いカードはなるべく最後の方に使わないといけません。
カード1枚につき1金払うことで追加でカード回収が可能
しかし、お金を払うことで追加でカード回収が可能です。
捨て札を沢山回収したいならお金は必要になります。
3枚しか回収しないと厳しいので、基本的には幾らかお金を払って回収することになります。
マップ上の労働者コマを2体まで回収可能してお金をもらう
マップ上に置かれた労働者コマを2体まで回収して1体につき1金を貰えます。
基本的にはデメリットが少ないので回収して2金貰っておいた方が良いですが、コマを回収することでほかのプレイヤーの利益になる場合があるので、考える必要があります。
労働者コマがなくなったことで再度労働者コマを配置して、お金や勝利点を取られることもあります。
カード市場の調整
市場で最も安いカードから一定枚数をゲームから除外します。
除外後は通常通り山札からカードを補充します。プレイヤーが手札回収するとドンドン市場のカードが流れていくことになります。
購入可能な4枚のカードに、それぞれ1金安く買えるトークンが置かれます。お金不足でカードを買えないことも良く起きるので、1金安くなるのは結構重要です。
買いたかったのに流れてしまった、、、とか、買いたかったものが安く流れてきた、っていうようなことが良く起きます。
これで手札回収アクションは完了です。
ゲームの終了条件と勝利条件
手札回収やカード購入をすると、山札のカードがガンガン無くなっていきます。山札が無くなると追加で脇に置いておいた最後の山札が登場します。
この最終の山札の中にある「災害カード」が一定枚数出たら、カード回収のアクションが出来なくなり、そのままゲーム終了に向かいます。
捨て札回収が出来なくなり、手札が尽きて何のアクションも出来なくなったらハードパスです。全プレイヤーがハードパスをしたらゲーム終了です。
クリア時得点などは無いので、ゲーム中に稼いだ勝利点が多いプレイヤーがそのまま勝ち、となります。
ファイユーム内容物
- ゲーム盤:1枚
- 50/100名声トークン:5枚
- 値引トークン:4枚
- 貨幣トークン(1ゴールド:26枚、5ゴールド:10枚、10ゴールド:5枚)
- ルール説明書:1冊
- リファレンス:1冊
- 名声マーカー:5個
- 集落:16個
- 街:8個
- 工房:10個
- 増築:5個
- 道路:40本
- 橋:4本
- 橋(大): 2本
- 労働者:30人
- 小麦:20個
- ブドウ:20個
- 石材:20個
- 魚:10個
- バラ:12個
- 建材:15個
- 宮殿:2個
- ワニ:38匹
- 管理アクション早見表カード:12枚
- 初期カード:25枚
- ゲームカード:69枚
ファイユーム 完全日本語版 レビュー
評価:★★★★★★★★★☆(9点)
フリードマンフリーゼさん久しぶりの大ヒット作な予感がする作品です。
私は「ロビンソン漂流記」や「電力会社」や「ファウナ」などの作品に感動して、フリードマンフリーゼさんの奇抜な作品が好きだったのですが、ここ最近の作品は、個人的な評価が若干イマイチなものが多い印象でした。
そんな中で登場した重量級ゲームが、このファイユームですが、これは抜群に面白いですね。
文字だけだと中々この面白さは伝わりづらいのですが、随所に面白い仕組みが施されています。所要2時間と重量級ボードゲームの1種ですが、夢中になってプレイしてあっという間に時間が溶けました。
楽しすぎてゲームはあっという間に終わった感触でした。
プレイ自体は非常にシンプルなので、個別のカードの効果さえ覚えれば、そこまで重さは感じません。個別カードの効果と睨めっこする時間は慣れていないと多めに発生するかもしれません。
カードの効果の面白さ
全50枚以上のカードは、その出方によって序盤・中盤・終盤とゲームのシステムや雰囲気が変わっていき、ちょっとしたレガシーなようにも感じます。最初はワニだらけでワニ退治で小銭を稼ぐのですが、その内ワニがいなくなったと思いきや、最初は見たことのない別の建物が建ち始めていきます。
橋が建ったり、工房が建ったり、最初のワニだらけのボードからは想像できないような発展したボードになっていきます。
最初は特にカードの内容の全容を見ずに遊ぶことが推奨されていますし、私もそういう遊び方が良いと思います。色々なカードが出てくるそれを見ているだけでも最初はワクワクすること間違いなしです。そういう意味でも具体的にどんなカードが出てくるのかは、最初はあまり知らないで遊んだほうが良いでしょう。
初プレイ時のワクワク感が強いゲーム、というのはこのゲームの特徴の1つでしょう。え、そんな風になっちゃうの、っていうプチドッキリ感が満載です。
きつすぎないインタラクション
全プレイヤーが共通のボードで共通の配置物を扱うというのは、苦しさが無くて非常に良いですね。
自分が置いたものも、他の人が置いたものも、全て全プレイヤー共通のものとして扱われます。配置したものは自分だけのもの、とするような「陣取り要素」を入れてしまうと、陣取りに失敗した時点で凄い苦しい戦いになってしまいますが、このファイユームの陣取りの軽さは好き嫌いが分かれるところかと思います。
ファイユームに関しては、他のプレイヤーの有利にならないようにコマを配置する、位しかボード上の妨害はやりようは無くて、ある程度は邪魔されずに好きにプレイできるのが良いですね。
あとは市場カードの先取りくらいですね。
基本的には全プレイヤーに得になるように、ファイユーム地方を発展させていくことが目的です。私利私欲に走らないようにしましょう(笑)。
デッキ構築とカードの旬
基本的には欲しいカードを購入するデッキ構築型のゲームですが、一般的なデッキ構築とは違ってエンジンビルドタイプのデッキ構築です。カードとスパイスでエンジンビルドする「センチュリースパイスロード」のような感じですかね。
ただ、一度構築したエンジンが最後まで使えるわけでもなく、マップに配置可能な建築物は有限です。「特定の建築物を配置して高得点を得る」というカードは、その建築物コマが配置されきったらもう使えなくなるということですね。
つまり、一度エンジンを構築してガンガンデッキを回せたとしても、その内建築物を置けなくなって、別の稼ぎ口を見つける必要が出てきます。カードの旬が移り変わるというのも中々面白い要素だと思います。感触的にゲーム内で2回位はカードの旬が変わる感じでしょうか。
リプレイバリューの高さ
どのカードが得られるかはタイミング次第ですが、得られたカードによっても全然戦略が変わってきます。
また、今のボードの状態によっても有効なカードが異なってくるので、プレイする度に違った戦略を楽しめて、リプレイ性もかなり高いですね。
例えば、「魚」という資源が登場するのですが、「魚」は特定の「魚を獲得するカード」を市場で購入して使用しないと得られません。なので全く「魚」資源を得られずにゲームが終わることもあります。前回のゲームでは全く魚を使わなかったので、次は魚中心に戦略を立ててみよう、などとなるわけですね。
ファイユーム基本セットには偶数番号のカードしか登場しないのですが、拡張で奇数番号のカードを登場させるとのことです(笑)。楽しみですね。
ファイユームの気になる点
ちょっとした欠点としては、カードの効果はパッと見ても最初はわからないものが多いので、プレイヤー人数分のカード効果早見表を用意してあげた方が良いかもしれませんね。
慣れれば問題ないのですが、初めて見ると、これはいったいどういう効果なのか?と考えてしまうことも多いでしょう。
初プレイ時は、それぞれのカードの効果を登場する度に、都度説明することになると思います。
ソロプレイ可能
ソロプレイも可能になっているので、どんな面白さか今度日本語版をプレイしたらレビューしたいと思います。
シナリオ性になっていたり、タイムアタックになっていたり、中々面白そうな予感です。
ファイユームの豆知識
ちなみに、ファイユームはエジプトにある都市ですが、メインボードを見ると北西は丸っと水源地帯になっています。これだけ見るとファイユームは海に面した都市なのかな?と思うのですが、実はこの北西の水辺はモエリス湖という湖なんですね。海だと思った人多いんじゃなかろうか。。。
エジプトには皆さんご存じギザのピラミッドがあります。この3大ピラミッドやケンタッキーで有名なスフィンクスがあるのが首都カイロ付近のギザになります。治安はやや悪いですが、TVや漫画でしか見たこと無いような歴史的な建造物が山ほどある観光名所です。
そのギザから国を東西にわけるようにナイル川が南に流れています。エジプトは基本的にこのナイル川付近のみが発展しておりそれ以外は砂漠地帯という国なのですが、そのナイル川の途中の砂漠地帯に、突如ポッコリと突出して存在する非砂漠地帯がこのファイユーム地方になります。湖とナイル川に挟まれているので、ナイル川から多少離れても水問題は何とかなったのでしょう。
ちなみにナイル川を更に南に降りていくとルクソールという街にたどり着きます。ツタンカーメンの遺体が保管されていたり、かの有名な王家の谷などがある見所満載の街ですね。このルクソールはボードゲームの名前にもなっています。
総合評価
ということで、このファイユームは2021年に遊んだ重量級ボードゲームの中でも、個人的にはかなりお勧めの作品です。
カードの効果も面白いし、リプレイ性も抜群に高く、プレイヤーのプレイ次第で盤面の様相が変わっていく様は他のボードゲームにない面白さです。
アークライトさんから2022年2月に発売されるので、気になる方は是非チェックしてみてください。
私は既に英語版を何度もプレイ済ですが、日本語版も即ポチっと購入しました。届くのが楽しみです。
評価:★★★★★★★★★☆(9点)
ファイユーム 完全日本語版 のスリーブ
ファイユームはカードによるデッキ構築とエンジンビルドがメインのゲームで、何度も何度もシャッフルするタイプなのでカードスリーブは合った方が良いでしょう。
56mm x 87mmのユーロサイズのスリーブが106枚必要です。
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