今回はアークライトさんより発売された「ハドリアヌスの長城」のボードゲーム紹介をしていきます。
「ハドリアヌスの長城」は、2022年9月現時点で最もビッグな紙ペンボードゲームといっても過言ではないでしょう。
ということで今回は「ハドリアヌスの長城(HADRIAN’S WALL)」がどういうボードゲームなのか、ルール紹介とレビューになります。
ハドリアヌスの長城 基本情報
デザイン | System: ボビー・ヒル |
---|---|
プレイ時間 | 60分 |
プレイ人数 | 1~6人 |
対象年齢 | 12歳以上 |
版元 | Garphill Games |
日本語版販売 | アークライト |
発売日 | 2022年8月 |
希望小売価格 | ¥7,480+[税] |
ハドリアヌスの長城ボードゲーム概要
本作は、ローマ皇帝ハドリアヌスが建設を命じたという長城を築き上げる、ボリューム満点の紙ペンゲームです。
プレイヤーは、皇帝から長城建設を命じられた将軍の一人となり、6年の期間中に、もっとも得点を稼ぎ属州総督の座を勝ち取ることを目指します。長城を建設する以外に、拠点となる砦の各施設(闘技場、市場、裁判所など)を効率的に成長させていくことで、得点を稼いだり、ゲームを有利に進めることができます。しかし、毎年ピクト族が襲撃を仕掛けて来るので、守ることができないと、得点が大きく減る要因となってしまいます。長城を強化して襲撃を防ぎ、砦の各施設を発展させていくバランス感覚が勝負の肝となるでしょう。
ゲームプレイ用紙が2セット400枚も付属しており、ゲームもコンポーネントも重量級な仕様! ゲーマー向きの深いゲームです。ソロゲームとしても高い評価を獲得しており、主要な砦として歴史に名を残した16棟の主要な砦を建設する一人用キャンペーンシナリオは圧巻です。
アークライト公式HP
ハドリアヌスの長城は、その名の通り「ハドリアヌス帝」から命を受けて蛮族から国を守るための「長城」を建築するテーマのボードゲームです。
ボードゲームのシステムとしてはいわゆる鉛筆などを用いて実際に紙に書き込む「紙ペン」タイプのボードゲームなのですが、そのボリュームがこれがまた半端ない。
紙ペンゲームの最高峰の1つといっても過言ではありません。
全6年間を通じて、砦と長城や市街を発展させていき、最も名誉を得たプレイヤーが勝ちとなります。
ハドリアヌスの長城 ルール概要
ハドリアヌスの長城は、慣れればそこまで難しくないボードゲームですが、初回プレイは説明だけで30分以上かかります。
詳細を説明していくのは難しいのでここでは、全体の流れがわかるようにルールの概要を説明していきます。
プレイヤーボードとカードの準備
プレイヤーボード1枚、紙を2枚、カードを1セット受け取って自分の前に並べます。
これでセットアップは完了です。
1人1つボールペンや鉛筆など紙に書ける筆記用具を用意しましょう。
▼セットアップ後はこんな感じになります。
ゲームの終了条件と目的
このゲームの終了条件は「6年経過する」ことです。
6ラウンド経過で自動的にゲームが終わります。
このゲームの目的は「勝利点」を沢山獲得することです。
6ラウンドプレイして勝利点が最も多いプレイヤーの勝ちです。
ラウンドの開始時の資源の獲得
毎ラウンドの開始時に、全プレイヤーは共通の資源を獲得します。
全プレイヤー共通の命運カードを1枚めくって、そこに書かれている資源を得ます。上の画像の例だと「黒2」「青2」「紫1」「黄1」「石2」を得ることになります。
それ以外にも各プレイヤーの紙の塗り状況に応じて、追加で毎ラウンド資源を得ることが出来ます。
「命運カード」には色々アイコンが書いてありますが、毎ラウンドの資源以外にも様々な用途で使用されます。
ゲーム終了時目標と追加資源の獲得
各プレイヤーは、自分の手持ちカードも2枚めくって、効果を発動します。
1枚は目標カードとして使用して、これはゲーム終了時の勝利点となります。
上の画像の例だと、1つはゲーム終了時の「交易品」の獲得数が4~8だった場合に勝利点が得られます。1つは「神殿」の完成数が1~3だった場合に勝利点が得られます。
1枚は追加資源獲得用に使用されます。左下に書かれている資源を獲得します。
上の画像の例だと、1つは「黄1」「石1」、もう1つは「紫2」を得ることが出来ます。
資源と目標、どちらを選択するかは自分の状況次第になります。
これで毎ラウンドの準備はOKです。
毎ラウンドの建築フェイズ
資源を獲得して目標を決定したら、全プレイヤー一斉に手持ちの紙をペンで塗りつぶしていきます。
どのマスを塗りつぶせるかは、手持ちの資源で決まります。
このゲームの資源は以下の通りです。
- 黒コマ
- 黄色コマ
- 青コマ
- 紫コマ
- 石
「黒コマ」は兵士です。主に防衛力の強化や、斥候に使用されます。建築にも使用可能で、一応このゲームで最も価値の高い資源という扱いになっているようです。
「黄色コマ」は市民です。左側の紙のエリアである「砦の建築」には全く寄与しませんが、右側の紙のエリアである「街の発展」に貢献します。
「青コマ」は建築家です。主に建物の建築に使用されます。
「紫コマ」は奴隷です。雑務など様々な用途に使用されます。最も価値が低いコマですが、様々な用途に使用されるため、必要なシーンだらけです。奴隷制度は道徳的によく無いわけですが、当時はこういう奴隷制度が普通にまかり通っていたわけで、それを踏まえての扱いになっています。
「石コマ」は資源です。長城の建築から建物の建築など様々な用途に使用されます。
それぞれの資源を消費することで、マスを塗りつぶすことが出来、塗りつぶしたマスから様々な効果を得て、更に発展させていくことが出来ます。
どのマスを塗りつぶすとどうなるか?というマスの効果の説明は、非常に膨大な情報量のため割愛します。このゲームには資源の使用には非常に多くの選択肢があるため、ゲーム終了時には大体6割くらいのマスしか使用しません。
ラウンドの終了時処理:ピクト人襲来
全プレイヤーがコマを使い切るか手番を終えた場合、ピクト人が襲来します。
ピクト人の攻撃力は、カードドローの結果で決まります。
「命運カード」を規定枚数めくって、そこに書かれている赤の攻撃アイコンの方向からその数だけ攻めてきます。
自分の長城の防衛力がそれに耐えうるだけ強化されていれば防衛成功です。一定数の勝利点を獲得します。
自分の長城の防衛力が耐えきれない場合は防衛失敗です。市民から軽蔑されて軽蔑ポイントを獲得します。これはゲーム終了時に失点になります。
ただ防御力で防衛するだけではなく、外交による防御など、自身の建築した建築物の特殊能力などによってダメージを防ぐことも出来ます。
▼命運カードを規定枚数ドローして解決。このカードだと左から攻めてくる。
何枚めくるかは、今が何ラウンド目かと、ゲーム難易度によって決まります。
1年目だとどの難易度でも1回しか攻撃が来ませんが、6年目だと「簡単」は8枚、「普通」は10枚のように難易度によってめくる枚数が異なります。結果、左3、中央5、右2、のように敵の攻撃力がばらけ、結果自分がどこを守っているかで結果が変わってきます。
ノーガード戦法のような方法も無くは無いですが、軽蔑による失点は二次関数的に増えていきますし、防衛成功による勝利点も得られないため、結果大量に得点を失うことになります。
毎年のピクト人襲来はどの方向から来るか一喜一憂して楽しいですね。
あとはこれを6ラウンド経過するまで繰り返すだけになります。
ハドリアヌスの長城 レビュー
ここからはハドリアヌスの長城を実際にプレイしてみて感じたレビューになります。
紙ペンゲームの最高峰
何度も書いていますがハドリアヌスの長城は紙ペンゲームの最高峰のボードゲームになります。
ここまで要素数が多くプレイ時間も長い紙ペンゲームは私は知りません。
プレイ時間は、初回プレイだとルール説明で30分、実際のプレイで90分で、合計120分くらいはかかるでしょう。
もちろんプレイ時間が長いだけではなく、しっかり面白いボードゲームになっています。
紙ペンゲームが好きな方なら、絶対にプレイしてみるべき作品の1つです。
資源からまた資源を得られて気持ちよくなれる
このゲーム最大の面白いポイントの1つは、資源を消費するとまた資源が得られる点です。
「黄色」の市民コマを消費して、適当な市民トラックを埋めると、そこから「青色」の建築家コマが得られたりします、その建築家コマを消費して「砦」の建築を進めると、次はそこから再度「黄色」の市民コマが得られたりします。
こんな感じでガンガン資源をコンボしていくのがたまらなく面白いです。これが本当に病みつきになります。
マスを埋めると何らかの恩恵が得られるマスが大多数なので、適当に資源を使っていくだけで本当に気持ちよくなれます(笑)。
拡大再生産というわけではないのですが、プレイ感はそれに近い気持ちよさがありますね。
ラウンド開始時に得られる資源は限られていますが、実際にそのラウンドで使用可能な資源は非常に増えて、それらを駆使して発展させていくことになります。
先読みして頭を使って考える
このゲームで運の要素は限られているので、このボードゲームは考えるのに必要な情報を与えられている完全情報ゲームに近いです。
そのためじっくり考えればかなり先まで読むことが出来ます。
自分の考えが上手くハマって、資源を効率的に使い切った時は中々爽快です。
リプレイ性はそれなりに高い
このゲームの要素はかなり多いため、1度のプレイで使用しないマスもかなりあります。
資源を何に使ってどのルートで発展していくかはプレイヤー次第。ここが良い感じにリプレイ性の高さに繋がっています。
「闘技場」や「神殿」は比較的使われづらい建物ですが、上手く使用すれば他の建物には無い力を発揮できて、普通に強いです。こんな感じで1度のプレイでは使わない建物も沢山あります。
オーソドックスに白の防衛に兵力を費やしても良し、生産力を強化しても良し、文化や交易を発展させても良し。鉄板行動のようなものはなくどういう風にプレイしても、大体良い感じに得点できるようになっていますし、楽しめるリプレイ性の1つになっています。
ただ、これはプレイヤーが意識的に発展ルートを変更しなければ、毎回同じような展開になってしまうことはあり得ます。毎年の資源はプレイ毎に異なるのですがそこまで大きな差は無いので、前回このプレイで高得点だったから、次も同じようにプレイしよう、というプレイが出来てしまうゲームです。
これを飽きやすいと感じるかは人それぞれだと思いますね。私はこのゲームを10回位遊んでいますが、今のところ飽きる気配はありません。
ちなみに、紙の枚数は200枚x2種類ということで、ソロだと200回遊べます。複数人プレイだと遊べる回数は減っていきますね。これだけあるので紙を使い切るためには何度も何度もあそばないといけませんね。このゲームの箱は非常に重く9割が紙の重さなので、ドンドン使っていった方が良いでしょう。
紙が減ってきたらラミネート加工して、ホワイトボードマーカーなどで書いて消して遊べるようにするのがよさそうです。
考えてしまうが考えすぎに注意
先ほどの感想とは逆になりますが、このゲームは先読みできるので、幾らでも考えられてしまうのですが、考えすぎに注意のゲームです。
全プレイヤー同時にプレイするので、考えすぎるプレイヤーがいると、それだけでプレイ時間が尋常じゃなく延びてしまいます。
このゲームは、そこまで考えなくても何とかなるので、気楽にプレイするのが吉です。
ソロプレイが面白い
ハドリアヌスの長城は、ソロプレイ感が強いといわれていますがその通りで、ソロプレイが非常に面白いボードゲームです。
私はソロプレイ向きボードゲームを何度も遊んでおり、大好きなジャンルの1つですが、このゲームはその中でもかなり上位にランクインする作品ですね。
複数人で遊ぶプレイ感と1人で遊ぶプレイ感がそこまで変わらないので、それはつまりソロプレイがものすごい楽しいということです。
控えめなインタラクション
ハドリアヌスの長城は、他プレイヤーとのインタラクションがかなり控えめなボードゲームです。
他プレイヤーとのインタラクションは、基本的には「交易」と「斥候」の2アクションだけです。
「交易」は他プレイヤーのカードを参照することが出来る代わりに、他プレイヤーに資源を支払うアクションで、「斥候」も他プレイヤーのカードを参照することが出来る代わりに、他プレイヤーに資源を支払います。
たったこれだけのインタラクションなので、そこを求めるプレイヤーには若干物足りなさあるかもしれません。
「交易」「斥候」を使わなければソロプレイ同然になります。
ダウンタイムも、全員が同時にプレイするためそこまで長くありません。
初回プレイまで長い
慣れれば60分程度で終わるゲームですが、初回プレイの説明はかなり長いです。
何故なら塗りつぶすことのできるマスが50か所くらいあるので、どこを塗りつぶすとどうなるかというのを全て細かく説明しなければならないからです(笑)。
そんなに難しくはないのですが、このインスト時間は結構かかることは覚えておいた方が良いでしょう。
中量級というには時間がかかりすぎる、重量級の部類だと思います。
総合評価
評価:★★★★★★★★★☆(9点)
2022年は非常に魅力的な作品が山ほど出ていますが、このハドリアヌスの長城は、その中でも個人的には上位にランクインする作品ですね。
文句なしにおすすめです。
良い前評判は聞いていましたが、確かにこれは評判が良いだけある作品です。面白すぎて発売後2週間で10回はプレイしています。それくらいにはハマっていました。
資源から資源を生み出していくループが、本当に病みつきになって、非常におすすめで面白い作品です。ただ、インタラクションの少なさと、高得点のためにはそれなりの鉄板ルートはある気はするので、総合して9点としました。
ハドリアヌスの長城 こういう人にお勧め
- 紙ペンゲームが大好物
- スキタイの侵略者シリーズの絵師が好き
- 1時間以上みっちり遊べる紙ペンゲームで遊びたい
- 拡大再生産が好き
- おすすめソロプレイボードゲームを探している
- 他人からの攻撃要素は好きじゃ無い
ハドリアヌスの長城内容物
- ルール説明書:1冊
- ゲーム用紙:2セット(各200枚)
- プレイヤーボード:6セット(各2枚)
- 資源コマ:50個
- 労働力コマ:90個
- 命運カード:48枚
- プレイヤーカード:72枚
- [カードサイズ:54mm×86mm]
ハドリアヌスの長城のスリーブ
スリーブサイズは54mmx86mmが120枚です。
カードの内容はそこまで重要情報にはならない気がしますが、それなりにシャッフル頻度が高いので、気になる人はスリーブはあった方が良いでしょう。
ハドリアヌスの長城紹介のあとがき
以上、ボードゲーム「ハドリアヌスの長城」のゲーム紹介でした。
まさか日本語版になるとは夢にも思っていなかった作品で、噂にたがわぬ面白さとはまさにこのことです。
自分で10回以上遊んだボードゲームは、基本的には高評価と考えて良いと思うのですが、私はこのゲームは購入後2週間で達成しました(笑)。それくらい個人的に楽しめているボードゲームです。
抜群に面白いので、未プレイの方は是非一度プレイしてみてください。
スポンサーリンク