2020年のドイツ年間ボードゲーム大賞が発表されましたね。
コロナ禍の影響でどうなるかという感じでしたが、今年も無事にノミネート作品が発表され出そろいました。
今回は2020年のドイツ年間ボードゲーム大賞にノミネートされている各作品を深堀りしてみたいと思います。
折角の個人サイトなので、出版社に忖度せずに思うが儘に書いていこうと思います(笑)
▼SDJの2021年ノミネート作品も発表されました
2020年ドイツ年間ボードゲーム大賞 ノミネート作品紹介
今年のドイツ年間ボードゲーム大賞は、去年の小粒過ぎる作品に比べると今年は若干重めにシフトしており、ボードゲーム大賞らしいラインナップになっているという印象です。
実に良い感じですね。
個人的にはドイツ年間ボードゲーム大賞と言えば、カタン・カルカソンヌ・ドミニオンのようなしっかりボードゲームしている中量級前後の作品が受賞するという印象で、流石に2019年のようなノミネート3作品共に軽量級というのは個人的には違和感がありました。
採点する中の人も変わっているし、ビジネス的な側面もあったりするので、そう単純な話ではないのでしょうけどね。
今回ノミネートされた3作品いずれも言語依存度低めなので、そういう作品が選ばれやすくなっているとかそういう事情もあるんだろうか?アズールやジャストワンなども言語依存度は低め。
①マイシティ
マイシティは、ボードゲーム界の巨匠ライナークニツィアさんの作品。
この人の作品は大体外れないと言われるレベルで、世界のボードゲーム業界でレジェンドな方。
確かにこの人の作品は実際に遊んでみると非常に感心する部分が多い。
ただし、この人は優秀な作品を量産しすぎているばかりに、凄すぎて逆にドイツ年間ボードゲーム大賞はあまり受賞できていないイメージがあります。
ちなみに昨年2019年のドイツ年間ボードゲーム大賞ノミネート作品の1つ「LAMA」もこの人の作品ですね。
マイシティは、テトリスチックな街タイルを自分のボード上に置いて自分の街(マイシティ)を作っていくゲーム。
これだけだとありふれたシステムですが、大きな特徴としてレガシーシステムを搭載しているという点があげられます。
シールを貼ったりコンポーネントを破ったりと1度切りの体験を楽しめる代わりに、不可逆で元に戻せないゲームを何度も繰り返して、徐々に変化を楽しむのがレガシーシステムの特長です。
1ゲームは約30分弱だそうです。これを同じメンバーで何度も何度もゲーム終了まで何時間も繰り返すようですね。
当然同じルールで最初から遊んでもつまらないので、一度作った街を破壊しては新しいルールが増えたり、勝っている街や負けている街の間で、上手くバランス調整されるような仕組みが入っているようです。
レガシーゲームなのに、途中でもう勝てないってなると楽しくないですが、そこを上手く調整出来ているみたいです。
実は協力型以外のレガシーゲームって珍しいんじゃなかろうかと思ったり…グルームヘイヴンやパンデミックレガシーなどの有名どころはいずれも協力タイプですし、こういう珍しさも評価された点の1つかもしれません。
更に遊んだ後は非レガシーゲームの通常モードとしても遊べるようになるらしいです。これは非常に重要でしょうね。
ただのレガシーゲームで終わらない点も高評価なポイントでしょうか。非レガシーな通常モードでどれくらい面白いのかは重要ですね。
ちなみにマイシティは、日本語版のローカライズ権に関して日本出版各社ひと悶着あったようです。
「カタン」「ウボンゴ」を出している手堅い印象のGPさんや、「EXITシリーズ」「キャット&チョコレート」など良作に目をつけて手広く出しているSNEさんも、マイシティには目をつけていたようですが、最終的には日本語ボードゲーム出版最大手アークライトさんが獲得したようです。
どう考えても確実に日本語版が沢山売れるとわかっている作品ですし、ボードの言語依存も無さそうなので日本語化する側も作りやすい、ということで当たり前のように日本語出版各社が手を出そうとしていたようですね。
説明書だけを翻訳して出せばよいのであれば、かなり敷居は低いでしょう。
どういう金勘定になっているかはわかりませんが、日本語版を出せば間違いなく利益が黒字になる、嫌らしい言い方をするならいわゆる安パイな作品ということなのでしょう。
ということで出版社間でひと騒動ありそうだった本作品。どこかの出版社が日本語版の版権を獲得したら、他が英語版の輸入&日本語翻訳付き販売を止めるのは、やはりそういう法的な取り決めがあるからなんだろうか?それとも単純にマナーとかそういう類のものなのだろうか?
ちなみに世界同時生産しての発売らしく販売時期は未定。アークライトさんからの続報を待ちたいところ。
大賞が確定した後にロゴを入れて販売するとかになるんだろうか?もしそうであれば大賞の発表は例年7月なので、販売時期は7月~ってなりますね。
私も購入予定なので、プレイしてみたら再度レビューを追記したいと思います。
②ノヴァルナ
ノヴァルナは、アグリコラやオーディンの祝祭で有名なウヴェローゼンベルグさんの作品。
今年のボードゲーム大賞の中で、唯一日本語版が既にホビージャパンさんから発売済み。
既に多くの方が日本語版をプレイしているでしょう。
どういうゲームかの説明は若干難しいのですが、手元にタイルを上手く配置して、配置したら一定条件で手持ちのチップをタイル上に置けて、手持ちのチップを一早く置ききるのが目的。
手番プレイヤーは、共通タイル置き場から、四角いタイルを1つ獲得して自分の手元に配置する。
強いタイルを獲得すると、次に獲得できる手番が遅くなり、弱いタイルを獲得すると手番が早まり、連続で何度もタイルを獲得できたりする。
獲得したタイルを縦横に繋げていき、タイルに書かれている条件を満たすと、タイル上に自分の色のチップを置ける。
タイルを繋げまくってその手元のチップを一早く置ききった人の勝ち。
タイルを上手く配置することで手持ちのチップを連鎖的に沢山置いているのは、プレイしていて中々気持ちがいいですね。ただ、全体的に手堅い佳作ボードゲームという感じはするが、淡々としてやや盛り上がりに欠ける作品という印象です。
システムも特にそこまで目新しくて面白いアイデアという感じはせず、過去のボードゲーム大賞作品にあるような、ワクワク感や感動は得られませんでした(あくまでも私個人の感想です)。
決してつまらないというわけではないのですが、これくらいの作品なら他にも世の中に沢山出てそうかなと感じます。
買って損はない位には良く出来た面白いボードゲームですが、大賞かと言われると悩ましい、そんな感想です。
③ピクチャーズ
他2作品に比べると代表作品の話を聞かない、恐らく新興デザイナーさんの作品。
ピクチャーズは、ディクシットを元祖とする絵柄カードを用いて正解を当てる系の作品。
カードを増やせばリプレイ性が増すので、それだけで拡張が出せるのはビジネスとして非常に商売上手なジャンル。
絵柄遊び系システムは絵柄の表現に言葉や文字を使う作品が多いのですが、ピクチャーズの大きな特長は、物理的なアイテム(石やブロック、紐など)を使って表現する点です。
これは上手いところに目を付けたなぁという感じ。非常に面白いアイデアだと思います。
正直表現しづらすぎてゲームにならないのでは?という感じも最初はするのですが、意外にしっかり表現できてそれが面白いようです。
ディクシットが世に出たときにも思いましたが、こういう思い付きそうで思いつかない意外なアイデアのボードゲームは大賞しやすい気がしますね。なので順当に考えるとこれが今年のドイツ年間ボードゲーム大賞の本命かなという感じ。
コロンブスの卵的な話ですが、こういうゲームシステムなら本場ドイツだからとかそういう話はなく、日本のデザイナーやその辺の小学生でも思いつくことが出来たと思うのですが、思いついてかつ実現させてモノにするというところまで行くのは中々難しいようです。
ただ、日本のデザイナーにとって夢はある話だと思います。
ノミネートされるだけあって、既にプレイした方の評判はかなり良く、どういうプレイ感か非常に気になっています。
遊べる環境はあるので、自粛が空けてもう少し経ったらプレイしてみたいと思います。
ただ、あまり期待しすぎると反動が酷いので、心を無にしてからプレイしてみたいですね(笑)
Youtubeのプレイ動画を見てみましたが、パーティゲーム要素が強いはずなのに、思ったより盛り上がりに欠けそうかなという印象も受けました。
他の人の絵柄を当てるのはオマケで、あくまでも限られたリソースを用いて何とか自分で絵を表現する、というのが面白いんだと思いますね。こればかりは実際に遊んでみないと何とも言えないなぁ。
言語依存はほぼ無いので、アーチゲームズさんが日本語和訳付き版を輸入販売しており、既にプレイしている方はそれなりにいたようです。
こちらはホビージャパンさんから日本語版の発売が発表されています。
ただ、そのうち他言語版ってなって日本語の説明書が封入されるだけとかになる気もしなくもないですが…世界の7不思議Duelとかそんな感じですね。
こちらも大賞発表後の発売ですかね。2020年7月, 8月の発売でしょう。
2020年ドイツ年間ボードゲーム大賞 管理人の予想
個人的な期待値としては
マイシティ>ピクチャーズ>ノヴァルナ
といったところ。
現実的には
ピクチャーズ>ノヴァルナ>マイシティ
という感じがする。
マイシティは、個人的な期待度は高いが、レガシーな点がどこまで大賞として受け入れられるか次第という感じ。一般論的にレガシーシステムは大賞を取れる感じがしない。非レガシーな部分もどれだけ面白いかが気になるところ。
ピクチャーズは、この中ではアイデアも斬新だし評判も良いし世界中で売りやすいし、前評判的には鉄板っぽいですね。ただ、絵柄系は過去にディクシットが大賞を取ってしまっているので、ゲーム感にどこまで違いが出せているかは気になるところです。
ノヴァルナは、個人的には特筆すべき点が特にない佳作という印象なので、ちょっとインパクトに欠けて大賞は無いかなぁ。まぁ、尖っておらず安定しているという点では万人受けする大賞向きという考えもあると思いますが。
どれも持っていて損はないゲームだと思いますし、果たして結果は如何に。
ちなみにピクチャーズもマイシティも日本語化が決定しているので、購入してプレイ予定です。プレイしてみたら感想を追記したいと思います。
2020年ドイツ年間ボードゲーム大賞 エキスパート部門 ノミネート作品紹介
ここからはエキスパート部門。
無印大賞と違って、エキスパート部門は毎年それなりにしっかりとしたエキスパート向きな作品が出そろっているイメージがあります。
ただ、今年は若干重さ控えめになっている気はしますね。
①ザ・クルー
ザ・クルーは、ミッション達成型の協力型トリックテイキング。
1ゲーム自体は早くて5分以下で終わるが、ミッションが変わると難易度も変わり、連続したミッションを次々に達成していくのが目的。
ミッション達成型の協力型トリックテイキングというだけで珍しい気がしますね。
協力型カードゲームと言えば、ザ・マインドが一時期流行りましたが、あちらはほぼ運ゲーなのに対して、こちらはしっかり実力が反映されるタイプ。
トリックテイキング自体は、切り札固定のマストフォロータイプなので超普通で珍しくも何ともありません。
話を聞く限りでは、ちゃんと頭を使ってプレイできる人同士でプレイしないとクリアは難しいようですね。全員で協力しないときついので、誰か1人が台無しなプレイをするだけでミッション失敗するのは簡単でしょう。トリックテイキングの基礎ですが、何故この人がこういう手を出しているのか?をちゃんと読み切れないとクリアは困難そうです。
果たしてパーティゲームなどから入ったボードゲームエンジョイ勢でどこまでいけるか?1プレイ自体は軽いがエキスパート部門ノミネート、というのはこういう理由でしょうね。
海外のゲームの祭典で人気投票NO1ということで海外での評価は非常に高いようです。
それだけで大本命って感じですね。
GPさんから日本語版が出るという話が去年末には出ていたのですが、その後どうなったか話が途絶えている状態ですね。ただ、コロナ禍などもありましたが、日本語版が出るのは間違いないと思います。
これまた大賞発表まで待つ感じなのかな?
値段もそこまで高くはないでしょうし、日本語版が出たら私も購入して遊んでみたいと思います。
GPさんから2020年6月に日本語和訳付きが発売されました。
これでも十分遊べるわけですが、更に完全日本語版がGPさんからこれから発売になるようです。
【プレイ後感想】
大賞発表前に遊べたので追記します。
率直な感想としてはこれは面白い!ですね。
ミッションは50個ありますが、1つ1つやりごたえがあって、クリアには達成感が伴います。
1プレイ自体は本当にあっさり終わってくれるのがまた良い。
帰る時間までやれるだけやろう、と言って30分~45分くらいで適当なミッションを5つ位やって解散、みたいな遊び方が簡単に出来ます。
私がやったときはまさにそういう遊ばれ方で、1時間弱の6,7ミッション位で終わりましたが、個人的には継続して+1時間位は平気で遊びたくなるような面白さでしたね。
このゲームには、トリックテイキングの悩みどころや、テクニックが凝縮された面白さがあります。これはトリックテイキング好きには間違いなくたまらない点でしょう。
他のプレイヤーの色を全て吐き出させるとか、上手く他のプレイヤーがトリックを取れるように小さい数字を出すとか、手番をパスしたいがためのカードを出すとか、トリックテイキングのおおよそ全ての技術を駆使して立ち回る必要があります。
自分が上手いプレイをして成功すると、自分のお陰だと確信を持って言えるのは嬉しいですね。まあ間違いなく全員がそう思ってると思いますが(笑)
運要素もありますが、運は実力でカバーできるような難易度設定になっているのが良いですね。
逆に言えば、適当なプレイではクリアできないので、トリックテイキングが苦手な人が1人でも入るときついと思いますね。
そういう意味では人を選ぶゲームなのは確かにその通りです。
これが無印ではなくエキスパート部門ノミネートされた要因でしょう。
②キングスジレンマ
アンキスト王国の王の悩みとは?
キングスジレンマは、シナリオ選択型のレガシーシステムボードゲーム。ジレンマシステムを搭載した世界初のボードゲーム!
各プレイヤーは、王家に仕える家臣として国の王政に手を出しつつも、自分の家の発展のために立ち振る舞う必要がある。
1回1時間のレガシーゲームを大体15~20回位プレイしたらストーリーの全貌がわかってゲームクリアという感じらしいです。
各プレイヤーの選択次第で、次の話の展開が変わってきて、更にその先の展開も変わってきて…というのを繰り返し続けるという感じで、昔流行ったひぐらしやFateのようなノベルゲームをやっているようなかんじですかね?
かなり凄い仕掛けが満載で、どんでん返しやサプライズ要素もあるような話を聞いており、ワクワク度という意味では今年のボードゲーム大賞の中では断トツでしょう。
という感じの、確かにこれまでにはなかった変わったシステムを搭載したボードゲームですが、ストーリーゲームなので文章が大事で原語依存度が高く、正直日本での注目度は低い状態でした。
遊んでみたかったが今年のドイツ年間ボードゲーム大賞の中で一番日本語化が無いだろうなぁ…と思っていたキングスジレンマですが、何とですね。。ホビージャパンさんより年内の発売が発表されました(笑)
いやー、原語依存度が低めのボードゲームが多い印象のホビージャパンさんですがどうしちゃったんですかね?
これは凄すぎる。。。やりますね。正直大賞は難しいと思いますが、大賞の結果に依らず私は買いますよ。
▼キングスジレンマ発売されました。
キングスジレンマ(The King’s Dilemma)がどういうゲームなのか?ルールの紹介とレビューになります。③カートグラファー
去年凄い流行った紙ペンゲームシステムを搭載した作品。
一時期の勢いは本当にすごく「Welcome To」「ガンツシェーンクレバー」「レイルロードインク」など多くの優秀な紙ペンゲームが登場しましたね。
どれも面白く何度も遊べる優秀なゲームでした。
既にボードゲームとして世に出ている「ロールプレイヤー」のストーリーラインにあるゲームらしいです。個人的にはそういうゲームって大賞取りづらい気がしますが。。。
このカートグラファーズが他の紙ペンゲームと違うのは、他のプレイヤーの妨害が可能になる点でしょうか。
一般的な紙ペンゲーム同様に、自分に都合の良いように紙ペンでマスを埋めていくのですが、特定のイベントで他のプレイヤーが自分の紙にペンでマスを埋めるようになるらしいです。対戦ゲームなので当然嫌な場所に書き込むに決まってますよね(笑)
日本語版の予定はまだありませんが、原語依存低めで出しやすいはずなのでほぼ間違いなく日本語版が出てくると思います。出すならロールプレイヤーを出しているアークライトさんですかね。
楽しみに待っています。
世界に一つだけの地図作り『カートグラファー 』ボードゲームのルール紹介とレビュー2020年ドイツ年間ボードゲーム大賞 エキスパート部門 管理人の予想
エキスパート部門はあまり情報が無く読めないですね。
事前評価の高さや一般論から考えると
ザ・クルー>カートグラファー>キングスジレンマ
という感じがします。
個人的にはどれも印象にないのでこれを応援!っていうのが無い状態です(笑)
敢えて応援するとすれば、全然注目されていないキングスジレンマをやってみたいと思っていましたが、何とホビージャパンさんより発売が決まりましたからね(笑)。
もはや賞の受賞するか否かはどうでもいい位衝撃的でした。
ザ・クルーは、やや軽い印象を受けますがが海外でも評判はかなり高く、この3つなら大賞ならこれかなという感じ。もし受賞したならトリックテイキングの受賞は初になるんじゃなかろうか。
カートグラファーは、紙ペンゲームがどこまで頑張れるか。他の優秀な紙ペンゲームですら受賞を逃しているのに、今更受賞できるとは考えづらいかなぁ。あとは既に発売済みの他のボードゲームと同じ世界観です、という設定もボードゲーム大賞としては蛇足な気がする。
キングスジレンマは、言語依存が高すぎる上にレガシーシステムなので幾ら面白くても評価されづらいでしょうね。去年のノミネート作品の「Detective」のような印象を受けます。ゲームシステム自体は他にない位オリジナリティのあるゲームだとは思うので、個人的な注目度は高いです。
以上、2020年のドイツ年間ボードゲーム大賞の作品紹介でした。
日本のみならず世界中が注目している大賞作品を受賞するのはどれになるでしょうか?
ほぼ、すべての作品が日本語化されて出るようなので、発売されたら順次遊んでいきたいと思います。
▼SDJの2021年ノミネート作品も発表されました
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